ワールド体験記 その1

新年度渉外の犬束です。

役員が変わってから全くブログが更新されていない!ということで、ワールドに行ってきた者として、せっかくなのでワールドでのラウンドを1つずつ振り返ってみることにします。
まずはR1から。ランキングの部分の、国名の横は個人のspeaker pointです。
Motion: THW ban all forms of gambling.
1位 Closing Opposition DCU B(アイルランド)75点,76点
2位 Closing Government MGIMO A(ロシア)73点,72点
3位 Opening Opposition UNI OF TOKYO A(うち)犬束70点,城谷71点
4位 Opening Government CNA-QATAR A(カタール)60点,58点

ワールドということでいったいどんな難しいmotionが出てくるのだろうか…、と内心ひやひやしていたところ、案外最初は普通のmotion。motionの発表のスライドも、日本の大会とは違って1枚目に"Cork Worlds 2009 R1"、そして2枚目にmotionが書かれているというあっさりしたものだったので、ちょっと肩透かしを食らった感じでした。
当然タブには国名など書いてはいないので、とりあえずカタールのチームがいるんだな…ということくらいしか相手の情報が分からないままラウンドルームへ。ラウンドルームではOpening Governmentだけがプレパをして、他のチームは廊下のラウンジのようなところでプレパ。motion発表後15分経つと、他のチームもラウンドルームに入ります。前日のBriefingでは、このあとmotion発表後20分たったところでスピーチ開始と言っていましたが(移動時間を考慮してのもの)、実際にはラウンドルームに入ったらすぐに始める試合も多かったです…。Opening Governmentの時は、「ちょっと、始めるの早い!」と微妙に思ったりもしました。
というわけでラウンド開始ですが、PMが「このmotionは明らかでDefinitionする必要がないので早速argumentを説明します」と言い放ったかと思えば、3分くらいでスピーチを切り上げるという有様。
強い相手を想像していたぼくは逆にびっくりしましたが、とりあえず自分のスピーチでは相手が出してきたsocial harmというargument(人々がギャンブル中毒になって銀行からどんどん金を借りるので、他のことに使える金が無駄遣いされ、また家族などにも負担をかける、というもの)に、そもそも何も考えずに借金するほど金を使うほど一般の市民は馬鹿ではないし、万一ギャンブルで借金したりしてもそれはinformed choiceなので問題はない、と反論。自分たちのargumentは3つ。
①protecting individuals' right to persue happiness
②making profit from gambling industry
③flourishing of blackmarket
LOのぼくが①と②を説明し、DLOの城谷くんが③を説明しました。①では政府の役割が個人の幸せを最大限守ることであり、gambleそれ自体は他人に危害を及ぼすものではない上に、gambleのせいで破産したとしても、金を使いすぎたら破産するのは言うまでもないのでそれはvoluntary harm, informed choiceであるから、gambleを禁止すべきではないと説明。②ではgambling industryのprofitは税などの形で政府に還元され、重要な財源になっているのに、このplanを採るとそれがなくなって財政が逼迫すると説明してspeechを終える。
DPMはinformed choiceであるというのに対し、gambleはtemptationであるから自発的にやめることが不可能であるから違うと反論し、②に対しそもそもgambleに政府が投資すること自体が金の無駄だと反論。相手の2つ目のポイントは宗教的にgambleが良くないからbanすべきというもの。…う~ん。
DLOで宗教的によくないということが分かっていたらそもそも信者はしないから問題ない、と反論。また、gambleはhigh-return industryであるから金の無駄ではないと反論し、gambleでの破産に対してもsafety netがあってある程度は保護されていると説明。③の説明は現状分析に時間を使いすぎてる感があり、planを採った後に本当にblackmarketが増えるのかという部分まで説明できていなかった感がありました。
CGのextensionはfreedom of choiceを守るせいで市民が中毒になるなら政府は制限をかけるべきというものと、blackmarketの興隆によりstate securityが悪くなるというもの。
COのextensionはfreedom of choiceと、金についての話、そして犯罪についての話。
正直なところ、COのextensionはうちらの議論と話していることはほとんど変わらない気がしましたが、やはりnativeのチームなのでelaborationで大きな差があったということでしょう。例えば、gambling industryのprofitについての議論も、実際財源がなくなってどのような人々に悪影響があるのか(これが説明できるかは英語が出来るかどうかの問題じゃないですが)、など。CGも説明が上手いな、と感じました。
Round終了後は、廊下に出て他のチームの人と談笑。DCUの片方の方は特におしゃべりだった記憶が。15分くらい待った後で招集がかかり、リフレクのためRound Roomに戻りました。
ChairはChristopher Crokeという方。全体的にレベルの高いラウンドだったと言っていました。アドバイスとして指摘していたのは、POIをもっとオファーしなければならない、ということ。確かに、Closingの2チームは英語も説明も上手いなとは思いましたが、POIには殆ど立っていなかった記憶があります。むしろうちらの方がPOIに立ってたかもしれない。
このラウンドで感じたのは、主要なargumentを出しても、しっかり掘り下げた説明ができていないとClosingのチームにargumentを取られる可能性もあるということ。特にnativeのチームなどとなると英語力の違いもあり、やはりきめ細かな説明ができるので、その可能性が高くなると思います。argumentをたくさん出してClosingのチームがextensionを出せないように、というのはよく言われてきましたが、それに加えてelaborationも重要であるということを痛感しました。
次はR2について書きます。

コメント

匿名 さんのコメント…
いよっ、いぬっち、待ってました!!

これこれ、こういう話が出てくるのを楽しみに待っていたんだよ。ワールドの模様が詳しく書かれていて、とても参考になります。

そうね、世界大会では、ワールドの独特のスタイルに慣れるとのも大事だけれど、「ポイントの発展」が一番重要になります。

日本に比べて、世界の優秀なディベーターはポイントの説明が細かいのだよ。英語や、スタイル云々より、まずそこで勝たないと、世界大会では通用しません。

具体的には、分析や例をしっかり盛り込むことができるか。特に例や数字は、海外でもそれほど使うチームは多くないので、しっかり入れることができれば大きな武器になります。

世界大会のコツは、「ポイントで勝つ」ことです。

時にいぬっち、25日(日)にICUでワールドの報告会をやるので、よかったらおいで~。詳しくは、僕のブログ(ヤングマンのディベート格闘記)を参照してください。
匿名 さんのコメント…
Youngmanさん、コメントありがとうございます。
このブログはあまり更新されないので、正直読んでる人がいるのだろうか…、と心配してたんですよ(誰も読んでいなくても多分この記事は続けますけどね)。読者が一人でもいるとわかると、励みになります!これからもよろしくお願いします。

ワールドの報告会、喜んで参加させてもらいます。部内で参加者を募って、またYoungmanさんのブログにコメントしますね。
匿名 さんのコメント…
youngmanさんのブログから飛んできました。ポワールです。

ラウンドの様子がかなり細かく書いてあって、非常に参考になります!!それにしても、Christopher Crokeのジャッジ…うらやましすぎて死ぬ…笑
Atsushi さんの投稿…
ポワールさん、UTDSブログを訪問して下さってありがとうございます!

もともとこれを書こうと思ったのは、単に個人的にワールドの復習をしようと思ったからなのですが、読者の方々の参考にもなれば幸いです。

Christopher Crokeは、終わった後にちょっと質問に行ったのですが、かなり親切に答えてくれました。やっぱり、ワールドのチェアーになっているような方々はすごい方ばかりですね~。