ESUJ感想②
今日は、ついに我らが部長が満を持した登場です! |
こんにちは。今年度部長の井上裕紀です。
10/7,8と行われましたESUJで優勝しました。遅くなりましたが(…大変遅くなりましたが汗)、今回ESUJの優勝に至るまでの感想を書かせていただきます。
印象に残った2つのことについて書いていこうと思います。1つはディベートのテクニカルな面でスタンスの重要性について、もう一つは私的なメンタル面でのことです。
1.スタンスの重要性
練習や大会などでディベーターの多くは、スタンスを間違えて、関係ない話をしたり、ロジックを飛ばしたり、タイマネを失敗することがあります。それを確実に忠実にこなしているのが、ブレイクラウンドに行くようなディベーターなのかなと思いました。もちろん、上のレベルになるにつれて、それが当たり前になって、知識量、イラスト量、見せ方などによる違いが出てきて、差がつくようになると思います。でも1,2年生でスタンスを完璧にできる人は案外少なく、この安定感が強さにつながっているのだと思います。
正直に言って、僕は人にできない素晴らしい発想ができるだとか、知識量が豊富だとか、英語の発音がきれいで分かりやすいとかいうわけでは決してありません。真逆です。それでもなんで今回優勝できたのかを後から考えると、大会本番で相手よりもスタンスの取り方に比較的失敗しなかったからだと思います。
もちろん確実にできていたというわけではなく、実は本番でもR4のTHBT the UN should not use private military corporations in their peacekeeping operations.( 国連は平和維持活動において民間の軍事会社を用いるべきでない)というmotionでスタンスを失敗してしまいました。具体的にはOppositionだったのですが、現状で民間軍事会社が各国の軍をベースにしつつoptionとして利用されていることを知っていたにも拘らず、uniquenessを消すと思いその事実を無視してあたかも単体で民間軍事会社が活動しているような話で進めていきました。でもその場合 、数やefficiencyにおいて明らかに負けてしまうため、勝つことができませんでした。普通に危険地域にのみ民間軍事会社を送るようなcharacterizeをしていれば勝ちやすいベンチだったので、スタンスの取り方にやられて印象に残ったラウンドです。逆に1RのTHW impose a 100% inheritance taxでは多くの人が言ってしまいそうなeconomyの点ではなく、inequalityの改善をスタンスとして最初から押しだせていたため、自分たちの押したいところが押せて勝つことができました。このようにスタンスの取り方は、上手く取れれば強いargumentになりますし、間違えると自動的に他の議論の核になる箇所の説明量が大幅に減ってしまったりimpactまで変わってきてしまうので、かなり勝敗に影響すると痛感しました。
ところで、こういったスタンスの取り方は、やはり上級生の方が比較的上手いです。なぜなら上級生は数をこなしている+多くの数のジャッジをしているからです。というのも、膨大な数のmotionがある中、いくつかのmotionに共通の典型的な対立軸があり(cookie cutter)、それは数々のラウンドやジャッジを通していく経験の中で見えるようになっていくからです。特にジャッジをやっていると議論がぶつけ合いになって水かけになりやすい個所がどこであるか、どう解消してほしいという視点が、gov, opp両方一気にわかってくるので、すごくいい練習です。(1年生にもジャッジはオススメします。)そのため、それが分かっている上級生はスタンスや押しどころが間違えにくいため、安定しているわけです。
それでは下級生は上級生にスタンスの取り方で絶対勝てないか、といったらそれは違うと思います。部分的に見ればイラストの深さや、視点の斬新さでは自己満で錆びついた頭を持つ上級生を上回っているところもありますし、現にUTDSでも練習会で2年生に勝ってる1年生もちらほらいます(←あれ?)。でもスタンスにおいてどう工夫してなかなかミスらない上級生に食いついていけばよいかと考えた時、2つ大きな方法があると思いました。(これはESUJを通してと普段の練習を通して感じたことです。)
①基礎motionをとにかく会得する
②相手のスタンスも考える③uniqueness, relevancyを考える
①に関しては、先ほど述べたcookie-cutterの考え方や対立軸、またそれをどう打開するかを一つ一つ考えて身に染みて覚えさせることが大事だと思います。これができているからこそ、相手の一番押したいところをしっかり抑え、相手を上回ることができるスタンスが取れる、または強めるべきポイントの分析を深めるのに時間が割けるのだと思います。そのためには、いろんなmotionで使われる対立軸や考え方がはっきりと出てくるような基礎motionを重点的にこなす、または2年でもちょくちょく戻ってこなしていくことが必要なのだと感じました。
②に関しては、その基礎motionでもcookie-cutterや対立軸をどうやって見出していくかに関わるのですが、相手が何を守りたくて、自分たちのどこまでagreeしてどこからdisagreeするのか、ということを意識するのが、結局自分の守りたいものを明確化するのに役に立ちます。自己は先ず他者を定義し差異化することで形成される、といったとこでしょうか(んー現代文かなんかで聞いたことがあるような…。言ってみたかった笑)。まぁとにかくclashになりうるところを抑えることで強い自分たちのスタンスが話せると思います。
③に関しては、逆にcookie-cutterに捉われすぎてmotionと離れてしまうことを防ぐのに必要なことです。分かりやすい例でいえばPrincipleで使っている人が多いAAAのApplicabilityにあたるところが抜ける人が多いといったところでしょうか。先の僕のSFの例でも、類似の別のmotion(THBT developed countries should return treasures to the country of origin.)でしてしまうような話に飛びついてしまったがために、relevancyに全然注目しないという形になってしまいました。結局これを防ぐには、ワード分析を一つ一つ丁寧にして深め、他のmotionとの違いを明確化していくことが、暴走を止めるいい手段だと思います。
このようにスタンスの重要性を認識し、更に意識するようになったというのが、今回のESUJで得た大きな収穫の一つだったと思います。
2.初心が大事
思えば僕が本格的にディベートにのめりこんだ大きな契機になったのは、去年のESUJでした。僕はヘルパーとして参加し、また初めて上級生の試合を見学しました。佐野さん川窪さん富永さん福元さんの4人の先輩はいつも見せないような緊張感の中、皆さん堂々とスピーチをされて勝ち進んでいかれていたので、それまでになく試合に興奮し、僕も多くの人前に立って競合相手にディベートしたいと思ったのを覚えています。梅子杯トライアウトで落ちてしまって萎えていたのですが、その思いを原動力にスピ練や自主練などを積極的にし始めました。思えばこの頃が一番純粋にディベートを楽しんでいたと思います。
その後、練習態度が評価されたのか部長に推薦され選出されたのですが、井戸さん田中さん加藤さん佐野さんといった歴代の素晴らしいUTDSの部長たちとは違って、部長になった当初から、そしてその後もずっと実力も実績もなかったのがずっとコンプレックスであり悩みでした。部長である内に実績を出さないと、と思っていたのですが毎日スピ練を続けていても満足するスピーチができることがなく、その間に周りはどんどん上手くなっていっていたので、焦燥感や劣等感ばかりを感じていました。T.I.Tech杯でもUTDSの部長だから鍛えないといけないということで井戸さん石河さんと組ませていただいたり、春Tでは富永さん大川というWSDCペアとも幸運にも組ませていただいたり、最後の学年大会であるジェミニ杯前も加藤さんや佐野さんや福元さんに何回も練習に来ていただいたりレクチャーをしていただいたりしたにも拘らず、結果は先輩方の足を引っ張るだけだったり、ジェミニは目標の優勝どころかQFどまりで終わって先輩の厚意を無駄にして期待を裏切る結果で終わったりして、あんなにセミナーとか行って復習してきたはずなのに、自主練もしたはずなのに、UTDSの部長なのに、こんなザマと思うととにかく悔しく情けなかったです。特にジェミニ杯で負けた後はもはや自分の中でこれ以上成長しないのでは、才能がないのではという諦めの感が出てしまい、1年の夏から毎日続けていたスピ練をやめてしまいました。自分がUTDSの部長や部員であることの意味を見いだせなくなって、ディベートをするのがどんどん心苦しくなり、正直、辛かったです。
特に秋T後はディベートをやめようと本気で考えました。秋Tではトライアウトの結果、皆さんおなじみ実力者の櫻井さんと組ませてもらえました。前から一度組んでみたいという気持ちがあり、組ませてもらえると聞いた時は、「今回こそは」と思って、スピ練を再開したり音源を使ってのMG練などをしたり、また9月に入っての直前期はほぼ毎日櫻井さんとプレパ練などをしました。しかし練習も本番も全然思うようにいかず、結果的にはブレイク落ちどころか、予選でもバブルラウンドにすら入れないという、予想以上に悲惨な結果に終わってしまいました。練習や大会中櫻井さんは文句ひとつ言わず、いつも朝早くから夜遅くまで練習に付き合ってくれたり、自分も大変な中、ディベートについて悩んでいた僕を励ましてくれたり僕が冴えない時は引っ張ろうとまでしてくれました。それなのに一方の僕はずっと失敗を引きずったり、不必要にプレッシャーもかけてしまったりという頼りなさでしたし、しかも最終的に努力家の櫻井さんをブレイクさせてあげられなかったときは、今までにない情けなさや不甲斐なさ、虚無感や絶望感に苛まれました。もうこんな辛いディベートはやめたい、専門も始まって忙しくなるし後は後輩のジャッジをして代替わりしたら引退したいとまで思いつめていました。
そんな中、ESUJは着々と近づいていました。すっかり自信のかけらも無くしていた僕は正直優勝どころか、ブレイクすら全く期待していませんでした。
ただ、秋Tから数日たったある日、僕はふと去年や一昨年のESUJの音源を聞き直しました。その音源には去年見学に行った僕にとっての、一年後の目標が確かにありました。生でこのディベートを観た時に感じた、こんな先輩みたいな強く堂々としたディベートをしたい、キレキレのrefuteをしたい、こんな風に完全に人を説得させてみたいとの、憧れや、ディベートにかけるわくわくした気持ちを思い出しました。また、去年は結果やプレッシャーにはとらわれず、純粋に前向きにディベートを楽しんでいたこと、ただただ向上心から連日連夜スピ練をしまくったことを思い出しました。しかし、現在の自分を振り返ってみると、そのような去年の自分とは対照的な、結果や周りの目や批判にばかり捉われ、焦燥感にばかり駆られてディベートを純粋に楽しめていない、最初から半ば諦めかけているという、目標の自分とは大きくかけ離れた自分でした。僕は昔の自分に対して面目が立たないと思って深く恥じ入りました。ただ、現実の自分と向き合うことで、自分の中のディベートの原点である理想像を再び見出すことができたように思えて、やる気や向上意欲が心の底から湧き出てきました。本当に久しぶりに自分の中でなにか吹っ切れた感じがしました。もちろん今までもセミナーやADIに行ったりして強くなろうと頑張っていたつもりでしたが、強くならなければというプレッシャーや義務感からではなく、純粋にディベートに打ち込みたい気持ちが戻ってきました。また、これまた当然ながらモチベーションだけで勝てたら人間苦労しないもので、練習でもしょっちゅう負けたりぼろぼろに批判されたりすることも多々(…ほんと多々多々orz)ありましたが、落ち込むよりも前向きに次につなげていこうという、当たり前の向上心が、でも僕にとっては大きな原動力になりました。
勝ちたい気持ちがあれば優勝できるとは決して言いません。ESUJを引退試合と位置付けている大学も多い中、参加した全員が何かしらの思い入れを持っていたわけで、僕の思い入れや気持ちが上回ったということは決してありません。もしかしたらこの僕の気持ちは今回の優勝には全く影響していないのかもしれません。でも初心を思い出すことは、自己嫌悪や重圧、絶望感で塞いでいた自分にそれら乗り越えようと思わせるほど、ディベートが好きだという気持ちを思い返させて再確認させてくれましたし、これからもまだディベートを続けていきたい、もっと上手くなりたいという気持ちも思い起こさせてくれました。それからというもの、スピ練や音源を聞くのが再び楽しいと思えるようになりました。初心は忘れたくないものです(´・ω・`)笑
最後になりますが、この場をお借りして今回の優勝に至るまで関わった多くの人にお礼を申し上げたいと思います。
大会運営に携わったみなさん、本当にお疲れ様でした。海外ディベーターを相手したり、社会人の方と一緒に運営するのは、学生だけで運営するものと比べても非常に大変だったと思います。そのような中海外ジャッジが増えたりmotionの質も良くなったりといろんな面を改善されていて、一参加者としてすごくありがたかったです。
今までずっと指導してくださった先輩方、やっと1つUTDSの部長に見合う実績を残せました(笑)とは言っても先に書いたように自分の実力はまだまだということは重々承知しているので、まだまだ頑張ります。お忙しいとは存じていますが、今後もご指導よろしくお願い致します。
同期のみんな、厳しい目で見てくれて勉強になりました。口酸っぱくマナー悪いとか何言っているか分からないとか部長ならしっかりしろとか言ってくれたおかげで夢に出てくるぐらい意識することができました(苦笑)。純粋にみんなのおかげです。応援もすごく心強かったです。この優勝は僕とハナちゃんだけではなく、銀杏も紅葉も梅子もジェミニも優勝できず狭間の代と呼ばれてきた僕らの代みんなで掴んだ、念願の優勝だと思います。僕らの代も十分評価されることが示されたので、これからNoviceとかJapan BPとかあるけど、勢いに乗って巻き返していきましょう。勉強きつくて忙しくなってきたけど、これからもできる限りみんなでディベート楽しんでいきたいです。
そしてパートナーのハナちゃん。ハナちゃんもまた苦労を重ねてきたディベーターです。発音やマナーがよく、1年の頃から部内で評価も高かったにも拘らず、ブレイク経験がありませんでした。秋Tもささまりとバブルラウンドに食い込みつつも、あと1点で惜しくもブレイクできませんでした。初ブレイクがしたい、との意気込みは日頃の発言や練習態度から、すごく伝わってきました。ハナちゃんのメンバーの上手くなり方にはパートナーながら目を見張りました。元々イラストが非常に上手だったのですが、練習を経るにつれて、ラウンド中に流れを読んで抑えるべきところを的確に押さえてくれるようになっていったので、すごく頼もしく安心感がありました。ハナちゃんのブレイクへの想い、それと名メンバーが光ってこその優勝でした。本当にありがとう。
最後に公のブログなのに私的で申し訳ないのですが、家族にお礼を書かせてください。わがまま言って学期中に海外大会に行かせてくれたり、また国内外の遠征でもお金を出してくれて本当にありがとう。無理するなと気遣ってくれたけどやっぱディベートは楽しいので今はもう無理とは感じません(笑)勉強と両立させながらこれからも頑張ります。
以上、長々とありきたりなことをつらつらと書いてしまいましたが、ここら辺で会長に送りたいと思います。
これからもまだしばらくディベートを続けると思うので、今後ともよろしくお願い致します!!
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