浅野Jr. による梅子杯 & BP Novice感想文  ~誠実でまっすぐな物語~

書き手の善良な魂が文章を通じて伝わって来るような、そういう文字列ってあるじゃないですか。
ブログ担2名の文筆が、2000年代にかすかに流行ってた例の「曲がる鉛筆」くらいにはねじくれているせいで、素直な名文という奴は久しくUTDSブログでもお届けできなかったんですよね。ところがこいつが、今、僕の眼前にある訳です。


いざ、公開の時。
浅野広太郎Jr. 。「自称都民(大嘘)」、口癖は"We told you," 変化パターンは "My partner told you," "My partner has clearly told you,"  「モテそう」な彼が、梅子杯とBP Noviceを振り返る。
御覧になるときは、部屋を明るくして、気持ちの上では正座し、居住まいを正した上でお読みください!

必殺技、ロジックの詰まったエネルギー弾を撃てそうな構え


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はじめに: この感想文はディベートの技術的な側面にはあまり触れていません。ですが、筆者が同じくらい重要だと考えるディベートという競技の辛さ、楽しさが伝わるように大会経験そのものを文章にしました。長文です、駄文です。興味があればお付き合いください。

Firstly, のポーズ
We told you に繋がる連撃の起点となる重要な動作


あれから早くも1ヶ月も経った。なぜだろう、もう半年も前の出来事のように感じる。濃すぎる1ヶ月だった。言葉で表現しろ、と言われてもできっこない。うん、確実にできない。っていう登野城っぽさを意識した書き始め。でも書き表せないってのは本当だったりする。梅子、BP Novice。感想。自己満と来年以降の1年生の参考に。そして東大に入ってディベートやりたいなあと思う高校生が1人でも増えてくれれば、という思いを込めて筆を取る。

(:多くの人名が出てきます。過去のブログを探していただければ何者なのか、その片影が伺えます。)



1. 大会前
初のトライアウト*で決まった出場者たち。紅葉杯が終わった翌週に浅野、清水、陣内、沖田は1*に集まった、チーム決めをするためだ。
「みんな希望のポジションあるー?」「1st!!!(一同)」」「…(一同)
なかなか決まらず、今思えばスムーズな滑り出しではなかったと思う。みんなUTの代表ということでそれなりの緊張感をすでに感じていたし、チーミングにまあまあ神経を使ってたのかもしれない。山田にラインで愚痴ってた気がする。(チーミングにおいてWAD*の干渉は一切受けてないのでご安心ください。)自分としてはフェアにトライアウトの点数で決めたいと思っていたのだが、まさかの同率2参った。結局じゃんけんで決めることになった。さんま*が全国共通のじゃんけんじゃないことに衝撃を隠せない中、じゃんけんは進んでいく。彼女はあまりにも強かった。1勝、2…3勝。一度も負けることがなかった。そして…Nao Shimizuに決まったのだった。

(1*: 駒場キャンパスの学生食堂。)
(WAD*: Waseda Association of Debaters (早稲田大学) の略称。山田はWADに所属する筆者の高校同期で大親友。)
(さんま*: 3回先勝ルールのじゃんけん。5回の場合はごま。みんな知ってるよね)


いや文章までかっけぇなんて、完全に完璧超人
配慮が行き届きすぎてて、もはや衝撃


はじめてラウンドを共にしたのはいつだっただろうか。彼女とは高校生の時、奇遇にも全国大会で対戦し、一応知り合っていた。あくまで一応である。というのもこの時、UTDSの同期となって半年以上経っていたにもかかわらずあまり互いを知らなかった。東大に入ってから、おそらく一度も一緒にディベートしたことはなかった。たとえ駒場練*ですら。この時、梅子杯まで残りすでに2週間ちょい。すでに焦りが募っていた。不安も。お互い牽制しあっていた部分があったと思う。いきなりあまり知らない相手に本音をストレートにぶつけるのは難しかった。というか、自身ですら当時の自分の気持ちから目を背けていた。プレッシャーを感じているという現実に向き合いたくなかったのだろう。練習しているという事実でごまかしたかったのかもしれない。2人で話し合い、とりあえず使えそうな時間という時間全てをディベートに投資することにした。個人的なことだが、10月は週3でバイト、週2UTDSということで平日11時帰りがデフォルトであった。土日もディベートに捧げよく生きてたな。それほど梅子にかける思いは強かった。その分苦難の道を歩むことになったのだが。(仕事は卒業したら嫌でも40年はできます!バイトは最小限に!

(駒場練*: UTDSの定期練習。毎週火曜日と金曜日の放課後に駒場キャンパスで行なっている。)


"Let's look at what they told to us" のポーズ
この構えに絡め取られた相手のアーギュメントは身動きが取れなくなる


もはや記憶は定かではない。でも初めて組んだラウンドでモーション*を読み間違え散々なディベートをしながらも、勝った。火力で押し切った感じだったと思う。安心と不安が心の底で絶妙に入り混じる。そんな状況だった。ところで重要な大会に向けて練習するチームは、y切片=1,x>0の下に凸な二次関数みたいな成長曲線を描くと思う。そこそこのディベーター同士が組めばはじめの感覚はいい。テキトーに合わせながら、それぞれ言いたいことを言うことができるからかもしれない。でも相手と完璧にシンクロナイズしようと試行錯誤する中で一度それぞれのスタイルを壊す。それが原因かはわからないがどん底を見る。逃げたくなる。今回も例外ではなかった。

(モーション*: ディベートの論題のこと。)

最初のラウンドから数日、現実から目を背けながらなんとなくプレパ練を繰り返していた。渡辺道場*も。モーション取り違えるなんて滅多にないし。修正して勝てたんだし。負けないよ。楽天主義は自身の最大の長所でありかつ短所でもある。スイッチが入らないとなんでもテキトーにやってしまう。それでいてうまく立ち回れるからこれがまたよくない。だが、継ぎ接ぎとレトリックだけでできたケースはやはり脆い。ついに破綻の瞬間が訪れたのである。あれは梅子1週間前の金曜日だったと思う。その日はHit-U A*と空きコマ練、その後駒場練のという2連戦だった。強いチームと2回当たる。妙な緊張感があった。チグハグなディベートを一気に2回も消費した1日だった。詳細は聞かないでほしい。とにかく、全ての歯車がバラバラに崩れ去った。プレッシャーも限界まできていたのだろう。ただただ負の空気に包まれていた。有元先輩、矢ヶ崎先輩の鋭角な言葉は自分の胸に刺さりまくった。いや、自分たちの。パートナーが落ち込む姿を見せまいと我慢しているのも感じていた。それが何よりきつかった。今思えば未熟な自分たちに至極真っ当な指摘をしていただいき、ほんとに感謝しかない。でもやっぱり当時は苦しかった。死ぬほど苦しかった。2人で何時間話し合ったことか、わからない。でも時間そのものに意味はない。2人で確認しあった内容と、そしてなにより互いの気持ちを共有したことに意味があった。そしてようやく

(渡辺道場*: 2年生の渡辺先輩が指導するディベート道場。BP Noviceに向け、主に空きコマに行なわれていた。)
(Hit-U*: Hit-U Debate Section (一橋大学) の略称。)

この写真、浅野Jr.君が自ら指定して来たんすけど
本人たちもこの感じ好きなんすね。ほほえま。


ところが、である。地はそんなに簡単に固まらない。雨の量が足りなかった。翌日、Tokyo Bとの練習。自分達の気持ちは晴れ切ってなかった。皮肉にもその日の空はどんよりとした不穏な雲に覆われていた。THW ban hate speechのオポ。昨日の悪夢が蘇る。やるべきことはやった気がするのに何か違和感。もはや何がいけないのかわからなかった。光という光、全てが消えようとしていたと思う。でもそんな時、平本先輩と栗原先輩は、優しくかつ冷静に励ましてくれた。親身になって解決策を考えてくれた。根本的な問題だった。(テクニカルなことは直接筆者に聞いて下さい!) 光が徐々に明るみを増していくのが感じられた。帰りには雲もなくなっていた。偶然なのかな…。そこからの1週間は本当にあっという間だった。勇気の要る決断だったが、練習量をだいぶ減らした。明らかにお互い無理しすぎだった。根の部分で真面目さが抜けない自分にとって授業を切ることがとてつもないストレスになってたのだと思う。(※授業は出ましょう!) でもその少ない練習の中でとても濃い擦り合わせができた。圧倒的質だった、っけ? 少なくとも自分はパートナーへの絶対的な信頼があった。たとえ多く練習できずとも、同じ方向を向いているという信頼、自信が。そんなこんなで梅子を迎えたのだった。


パートナー間の意思疎通、とても大事。
にしてもこの写真、「日本語初級」とかの教科書の
ダイアログの場面写真として使えるレベルにいい構図


2. 梅子杯
朝早い。結構緊張していた。渡辺先輩をはじめ、多くの方からいただいた応援メッセージが心強かった。スポンジのような心に深く染み込んでいた。
各ラウンドの詳細は他の人のブログ、大会FBページを参照してほしい。申し訳ない。1日目はなんとか全勝で4位ブレーク。ブレークナイトあっさりしてたなー。印象深かったのはR4QFKDS B*と当たったこと。前日練習含めて3日連続で当たった。決して口にはしなかったけど、本当に強かった。勝手に自分の中でS.K.を絶対に負けたくないライバルに据えている。また当たりたい、そう思ってしまう。SFの相手はKDS A。紅葉杯のGFで負けたのと同じチーム。そして1人はWSDC*でチーム・ルーム・ソウルメイトだった、ババタク。いいラウンドだったと思った。出し切ったと思った。なんであの時そう思ったのかはわからない。自分のスピーチひどかったなあ、って毎大会後に1週間くらい悩まされる。そう、負けたのだ。また負けた。3-2のスプリットだった。結果がアナウンスされた時、結構あっさりしてるなーと思っていた。終わったなぁって。そのつもりだった。はぁ。でもその時、柴田さんがあの、あの落ち着いた優しい笑顔で近付いてくる。なぜだろう。ピンと張りつめていた心の糸が緩む。目に熱いものが込み上げてくる。人前で泣いたのなんて何年ぶりだろう。自分でもびっくりした。でも泣きながら立ち尽くすしかなかった。清水七緒がシュークリームを持ってくる。本音、さらに涙が止まらなくなりそうだった。でも、パートナーに涙を見せたくなかった。情けなかった。ふぅ。楽しかった。悔しかった。終わってしまった。言い表しようのない喪失感が心に穴を開ける感じだった。
梅子はつらいよ。

(KDS*: Keio Debate Squad (慶應大学) の略称。S.K., ババタクはKDS所属のディベーター。)
(WSDC*:World Schools Debating Championshipの略称。高校生の世界大会。トムさん、久しぶりに話したいです!)




打ち上げの一コマ。
天パ、顔がうるさい!陳内もドン引きしてるだろ!
浅野程度のハッチャケ度合いに抑えなきゃ!


3. BP Novice
あの敗戦からわずか1週間後、BP Noviceがやってきた。梅子と対照的に緊張感があまりなかった。1週間でリセットされたからかもしれない。というか、梅子の喪失感から立ち直れないまま臨んだから、気負いも緊張もあるわけがなかった。うん、想定外の快進撃だった。BP1週間しか練習してない割にはびっくりするくらい噛み合っていた。チームとしての完成度が高かった。そりゃそうか。でもまたGF芸人かあ。GFうまくいかなかったなぁ。はぁ。書くの疲れちゃった。ってことでこっちの細かい感想はパートナーに任せた笑。言いたいことは1つ。楽しかった!(もちろん悔しかったけど。)

BP Novice 渡辺道場メンツ。
俗称「UTDS聖人サイド」が揃ってると思ったら
沖田がいたよ、沖田が。よかった、バランスアウト。


4. ほかに言いたいこと
まず、パートナーへの感謝。Literally THE BEST partner everだった。自分が好きな曲、終わりなき旅を聞けばその理由もわかる気がする。一緒に乗り越えた壁が今までのディベート人生で一番大きかった。一番苦しくて一番楽しくて一番成長した。やっぱり一緒に優勝したかったなぁ。ほんっとにありがとう。また組みたい。

次にUTDS同期のみんな。哲学の時間に隣でうたた寝している陣内を見て懐かしさを覚える。頑張ってたもんな。沖田もほんとにそのストイックさに感服した。お疲れ様。梅子応援に来てくれたしほりんとか茅根とかとーた(同期じゃないけど)とか、あなたたちは神様か。中島レオもおめでと。Novice、みんな1年生ペアで普段から道場で一緒に練習したり、駒場練で当たったり。みんなの頑張る姿、強くなってる姿をみて、モチベーション上がってました。UTDSが楽しいのはみんなのおかげです。ありがとう。

コツコツと努力した積み重ね。
運ゲーと言っても、練習が運の余地を少なくしていくよね。


最後にお世話になった先輩方。上に名前を挙げた先輩方はもちろんですが、普段からUTDSをはじめ多くの先輩方にお世話になっております。自分が強くなれたとすればそれは偏に先輩方のおかげです。本当にありがとうございます。Org ComCAを務め、素晴らしい大会を提供してくださった先輩方にも改めてお礼申し上げます。

ここまで読んでくださりありがとうございました。ディベートの競技以外の側面が少しでも伝われば幸いです。ディベートってヤバそうと思っている皆さん、やってみると案外、その価値観が変わるかも…。

ディベートって、楽しい!


※掲載して欲しくない内容がありましたら、筆者までご連絡ください。訂正させていただきます。


白と黒のその間に無限の色が広がってる。
酸いも甘いもあるからこそ、ディベートは面白い。


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はい、ということでお伝えしました梅子杯 & BP Novice 感想(Side: 浅野広太郎)。

しかしサファイアがあればルビーがあり、ウルトラサンがあればウルトラムーンもあるこの浮世。感想文を出してくれるのは浅野だけではありません。次に公開されるのは誰か!お楽しみに!!


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